燻製しなくても良い生ハムの作り方(下準備から塩漬け・熟成まで)

おいしい生ハムを山ほど食べたい。そんな時は、手作りしましょう。

けど家で燻製なんてできないし、豚肉の生食って危ないらしいし、なんだか怖いなあ…

そんな方のためにコイケが毎年作っている、燻製しない&低リスクなレシピを紹介したいと思います。

注意
豚肉の生食には食中毒のリスクがあります。

本レシピは出来るだけローリスクで生ハムを作ることを目的としていますが、生ハム作りはあくまでも自己責任で!

 

燻製しない生ハムの作り方

燻製しない生ハムと言いましたが、要はパンチェッタ(生ベーコン)を作ります。

生ハムもパンチェッタもお店で買うと結構な値段がしますが、手作りすれば買うよりもずっと安く作れますし、何より飽きるほど食えます。

作った生ハムは生で食べるのもおいしいですが、加熱すると旨味エキスがじゅわっと出てくるので、パスタやミネストローネなどに入れても最高にうまい。

たくさん作っておくとなにかと重宝します。

 

必要なもの

このレシピで使うものは次のとおり。

  • 豚バラのブロック肉(500g以上)
  • 塩(お肉の重さの0.2倍くらい)
  • 消毒用アルコールスプレー
  • キッチンペーパー
  • サランラップ
  • お好みのハーブやスパイス

脂身が好きじゃない人や、健康診断でコレステロール値がやばかった人は脂身の少ないモモ肉で作るのがオススメ。

ただし、お肉は絶対にブロック肉を使いましょう。ステーキ用などの薄い肉だと塩が漬かりすぎるため美味しくありません。

今回用意したのはバラ肉600gとモモ肉700g×2の計2kgのブロック肉。全部で1700円でした。

ちなみにブロック肉はスーパーで売ってる短冊状のお肉でオッケーですが、衛生面を考えて見切り品は買わないように!

 

バラ肉の脂身は塩が漬かりにくいので、あらかじめフォークでブスブス刺しておきましょう。

 

塩はできれば岩塩を用意したいところ。岩塩に含まれている亜硝酸ナトリウムには生ハム作り最大のリスクであるボツリヌス菌を抑制する効果があり、お肉もきれいな赤色に漬かります。

岩塩がない、もしくはちょっと値段が高くて気になる方は、海水から作られた天然塩がオススメ。1kg200円くらいで買えますし、精製塩より天然塩の方が甘みがあり、生ハムが美味しく仕上がります。

 

 

燻製しない生ハム作りをざっくり説明

燻製しない生ハム作りは超シンプルで、

  1. たっぷりの塩で塩漬け&熟成
  2. 塩抜き
  3. 乾燥

の3工程で完成します。

包丁も使いませんし、要は塩を塗りたくって放置するだけ。誰でも作れます。

ただ、お肉や調理器具に雑菌がつかないよう、手洗いやアルコール消毒は必ずちゃんとしてください。

インフルエンザなどにも効く次亜塩素酸が入った強力な消毒スプレーを使っても良いですが、次亜塩素酸は口に入ったら危険なので、お肉にはかけないように注意してください。(手や調理器具に使う程度なら問題なし。)

 

ってことで、早速作っていきましょう!

 

塩漬け

まず、豚肉にたっぷりの塩を塗りたくって腐らないようにします。塩分濃度を高めて、菌の増殖を抑制しましょう。

塩が雑菌のエサとなる水分(専門的に言うと自由水)を奪い、お肉の水分活性を下げてくれます。

 

塗り残しのないように、丁寧に塗っていってください。塩を塗っていくと、だんだん豚肉から肉汁が染みでてテカテカぬるぬるしてきます。

全体に薄く塗り広げて、豚肉が塩でうっすら白くなったら作業完了。

 

塩が肉汁に溶けて、大根おろしを塗ったような、塩麹を塗ったようなルックスに。

 

塩を塗ると、お肉の表面からもう生ハムっぽい匂いが漂ってきます。もうこれ絶対おいしい。間違いない。

 

こだわる人は、塩を塗った後にハーブをまぶすのもオススメ。

ローレル(ローリエ)やタイム、ブラックペッパー、パプリカなんかが個人的にオススメですが、自分なりに好きにアレンジしましょう。もちろん塩だけでもオッケーです。

ちなみに今回はローリエ(ローレル)とブラックペッパー、大好きなオレガノをまぶしました。

 

ハーブをまぶしただけで、どことなくオシャレ感がアップ。あ、もうこれ絶対うまいやつだ。

 

KALDIで売ってるミル付きのブラックペッパー(確か400円)が超便利。KALDI最高。

 

塩漬けの注意点

ちなみに今回は2kgの豚肉に対して200gの塩を使用してます。

重さで見ると塩分濃度が10%とめちゃくちゃ塩辛くなる計算ですが、肉汁と一緒に結構塩が流れていっちゃったりしますので、最終6%以上の塩分濃度を目指せばOKです。

本当は生ハムみたいに加熱しない食肉製品を作るとき、食品衛生法的には「水分活性を0.94以下にする」とか色々決まってますが、一般家庭で水分活性なんて測定できませんし、そもそも「水分活性ってなに?」って感じですよね。とにかく塩をたくさん塗りたくれば良いんです。

塩使いすぎじゃない?って不安になりますが、大丈夫。あとで塩抜きをします。

それよりも、下手に塩分を気にして塩の量を減らし、お肉を腐敗させてしまう方がヤバイので、安全に食べるためにも、どうぞ塩は遠慮なく塗りたくってください。今回は燻製もしないので、殺菌は塩だけが頼りです。

 

ちなみに塩漬けには、直接塩をすり込む乾塩法と塩漬け液(ソミュール液)に漬け込む塩水法の2パターンがありますが、今回は乾塩法で作っていきます。塩水法はまたいつか解説します。

ちなみに乾塩法なら豚肉の重さの6%以上の塩、塩水法なら15%以上の塩漬け液に漬け込みます。

 

塩漬けしたら冷蔵庫へ

塩をまんべんなく塗ったら、軽くラップして冷蔵庫に入れ、一日寝かします。すると塩分でジュルジュルと肉汁が滴ってきて、いい感じにお肉から水分が抜けていきます。

とにかく水分=雑菌のエサ、ということを常に頭の中に入れておきましょう。生ハム作りはいかにお肉から水分をなくすかが勝負です。

しみ出た肉汁にお肉が浸っていると雑菌が繁殖し、腐敗してしまう原因になりますので、一日一回お肉を清潔なキッチンペーパーなどでふいてあげましょう。

 

ちょうどいい金網がある人は、お肉を金網の上に乗せ、肉汁用の受け皿を下に置いておくと良いでしょう。

また、お肉から肉汁が出ると、最初に塗った塩も一緒に流れていってしまいます。塩分が不十分だと腐敗のリスクが高まるので、その都度、塩は塗り直す感じで。

特に注意したいのがお肉の端っこの部分。塩がしっかり塗れていないと、そこからすぐに腐ってしまいます。ぼくも初めて作った時は端っこから腐ってしまいました。

ちなみに腐敗臭や、お肉が緑色に変色しているのを見つけたら、すぐにその部分を切り落とせば大丈夫です。

 

塩漬けした翌日の様子

冷蔵庫で24時間寝かしたら、こんな感じになります。ひっくり返したので、お肉に金網の跡が付いちゃってますね。

肉の色もだいぶ茶色くなってきますが、正常な化学反応なので気にしない気にしない。茶色は大丈夫ですが、緑や青っぽい色に変色している場合、それは腐っているので気をつけてください。

 

うん、美味しそう。なんかもう、このまま焼いて食べちゃいたい。

けど塩をかなりの量使ってるので、めちゃくちゃ塩辛いです。

 

一日置くだけで、肉汁(ドリップ)もかなり染み出てます。

肉汁と一緒に塩も流れ落ちてしまっているので、追加で塗っておきましょう。

 

お肉の端の方もしっかりぬりぬり。

 

3日間も冷蔵庫で寝かせば肉汁が出なくなり、だんだんとお肉に含まれる自己消化作用によってうま味成分(グルタミン酸、イノシン酸など)がじわじわと増加してきます。いわゆる熟成ですね。お肉も弾力が増してくることでしょう。

 

ちなみに塩漬けはお肉の熟成も兼ねているので、できれば1ヶ月くらいは寝かせたいところ。1ヶ月も熟成させればもう豚肉の旨味は最高潮に達しています。しっかり熟成させることで、味にも深みが出てきます。

1ヶ月熟成させた肉をちょっと削いで焼いて食べるのも最高にうまいのですが、我慢がまん。

 

ちなみに大阪検疫所食品監視課によると、発色剤(亜硝酸ナトリウム)を使用しない場合は、

亜硝酸ナトリウムを使用しないで塩漬けする場合には、次の方法により行わなければならない。
イ) 食肉の塩漬けは、乾塩法により、肉塊のままで、食肉の温度を5°以下に保持しながら、食肉の重量に対して6%以上の食塩、塩化カリウム又はこれらの組合せを表面の脂肪を除く部分に十分塗布して、40日間以上行わなければならない。

大阪検疫所食品監視課

としています。

注意すべき点は、

  • 温度は5度以下
  • 6%以上の食塩を使うこと
  • 40日間以上

の3点ですね。

塩分は10%使用しているので大丈夫として、熟成させる際には必ず冷蔵庫の中で、かつ最低でも1ヶ月以上は塩漬けしましょう。



 

豚肉の生食は危険?

結論から言うと、豚肉の生食はとてもリスキーで、生ハム作りの本場イタリアでも毎年生ハム作りに失敗して食中毒になる人もいます。

今のところコイケは一度も手作り生ハムで当たったことはありませんが、不安な方は手作りせずに、市販の生ハムを買いましょう。

 

ただ、どうしても手作り生ハムの極上の旨味を知りたい!という方は、思い切って生ハムの原木を買ってみてはどうでしょうか。

生ハムの原木は軽く1万円以上するのでちょっと高価ですが、100gあたりに換算すると市販の生ハムより安く、何よりプロの生ハムを毎日楽しめるのは生ハム好きにはたまらないですね。

自分で作った生ハムを食べる達成感はぜひ体験してもらいたいですが、リスクなく生ハムを味わうなら、安全で味も間違いない生ハムの原木を買うのもアリだと思いますよ。

 

次回は…

と、ここまで生ハム作りの下準備から塩漬けまで説明しましたが、ここから熟成期間がありますので、次回(塩抜き、乾燥作業)はまた熟成が終わる1ヶ月後に更新したいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

それでは、続きはまた1ヶ月後に!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA